株式会社キノックス

なめこの栽培相談コーナー

なめこの栽培について、今までお問い合わせの多かった質問について解説いたしました。栽培するための参考にして下さい。

Q1. 接種後の菌糸伸長が思わしくないのですが?

A.

培地から害菌類が検出されないにもかかわらず、菌糸の伸長が思わしくない原因としては、培地調製時における発酵の影響が考えられます。
培地発酵は、きのこの菌糸の伸長に悪影響を与える「乳酸」等の有機酸を生成することから、菌糸の発菌・活着を著しく阻害することが知られています。培地発酵の原因としては、以下の要因が考えられます。

(1)ミキシング時の発酵

オガコに栄養材を混ぜて水を添加してからの培地は、外気温が高い場合には短時間に発酵が進行するようになります。
水を添加する前の空練り時間は長くとも問題ありませんが、添加後の時間は出来るだけ短くすることが肝要です。
水を添加してからの時間短縮のコツは、注水方法がポイントとなります。
ミキサーでの撹拌時の水の添加をできるだけ左右・中央部が均一となるようにします。
そのためには注水工程において、ミキシングにおける部位別の含水率(握り法で判断)にムラを生じないように加水方法を調整してください。

(2)高温下での培地の長時間放置

培地調整の終了した培養基は、必ずその日のうちに殺菌を行う必要があります。
培地を調製してから殺菌までの時間が長くなればなるほど培地の発酵が進み、菌糸の発菌・活着が悪くなります。
発酵した培地はミキシング時に異臭を発するようになり、殺菌後の培地の色が極端に黒ずむ現象が認められます。
調製した培地は、必ずその日のうちの殺菌を心がけるようにしてください。

(3)余剰培地の再利用

 調製した培地が余ることは良くあることですが、余った培地は翌日までそのまま放置した場合には発酵が進んでしまいますので、必ずその日のうちに破棄するのが基本です。
やむを得ず翌日に持ち越す場合、特に夏場仕込みにおいては必ず5℃以下の冷蔵庫で保管するようにします。
何よりも、調製培地が余らないようにミキサーへのオガコの投入量を極力適正化することが肝要です。

(4)原材料の発酵

 古くなって鮮度の低下した栄養材を使用した場合には、やはり培地発酵と同様の現象が見られます。
栄養材は必ず新鮮なものを使用してください。
特に米ヌカは鮮度低下が早いため、長期保管する場合には必ず5℃以下の冷蔵庫で管理してください。

 (5)機器類の掃除不良

 詰め込みの終了した機器類は毎日使用することから、とかく培地が付着したままの状態で原材料を投入して使用するケースが散見されます。
栄養価の高い余残培地をそのままの状態にして再使用した場合は、やはり発酵により培地内の菌体数が増加します。
殺菌で一応害菌類は死滅しますが、培地調整時の菌体数の増加は、殺菌後のバクテリアの生残率が高くなる傾向にあるため、殺菌不良の原因となります。
また、害菌類は死滅してもその代謝物が多く残りますので、菌糸伸長に悪影響を与えることにもなります。
そのため、使用後のミキサーなどの機器類は必ず毎日掃除を心がけてください。

Q2.高圧殺菌釜で殺菌ムラが出るのですが?

A.高圧殺菌釜の使用上のポイントは、「ナラシ」時間と「有効殺菌温度」の保持時間です。
ナラシ工程は釜内の空気と蒸気とを完全に置換するための工程ですので、釜の大きさとボイラーの能力によって処理時間が異なります。
効率的に脱気するためのコツは、ナラシ工程の際に釜へ圧力がかからないように排気と給蒸のバランスを調整することです。
また、給蒸方法の見直しにより、比重の軽い「蒸気」を意図的に釜の上部から供給し、重い「空気」を下部より排出することで、釜内部の温度ムラを改善することができます。
従来の下部からの給蒸システムと異なり、釜内部での昇温ムラがなくなるばかりでなく、蒸気の釜内停留時間が長くなることから、熱効率の改善にも繋がります。さらに、保持時間については最も温度の上がり難い箇所を基準として、培地内部が120℃の有効殺菌温度に達してから1時間の保持を行うことが基本です。

Q3.カルシウムの添加は増収効果があるのですか?

A.きのこ類においては、菌糸の伸長に適した培地pHがありますので、その値に近づけることで増収効果を図ることが可能です。
特に、なめこ栽培においてはその傾向が顕著で、消石灰や炭酸カルシウム等を使用して培地pHを5.5~6.0(殺菌前)に調整することで、収量を10%以上増加させることが可能となります。
近年は使用するオガコの樹種が悪化傾向にあり、その対策として米ヌカに代わってpHの緩衝作用のないフスマを主体に使用するようになっていることから、pH調整効果は大きな影響を及ぼします。
ただし、きのこの種類によってはカルシウムによる弊害を受け易いものもあるため、過剰添加には注意が必要です。

Q4.傘の表面にシミ状の模様ができるのですが?

A.なめこ傘表面のシミ様模様の原因については、原基形成時の害菌感染の影響と思われます。
最も可能性が高いのは、芽切り時のバクテリア感染です。
対策としては、倒立状態で芽出しを行うことですが、より徹底して行うためには、発生室の累積汚染を防止する目的で、天井や棚パイプ部などの水滴のでき易い箇所については消毒用アルコールを湿らせた布巾等で定期的に拭き掃除を行うことです。
また、芽出し室と生育室とを分けて管理することも予防対策としては効果的です。

Q5.傘が変形してしまうのですが?

A.傘が小さく、柄が太く毛羽立ったなめことなるのは、典型的な高温障害の症状です。特に、発芽を早めるために高温で管理した場合などには、棚の上部の菌床に症状が見られることが多くあります。
また、2番発生時に切り残した柄(石突き部)が発熱することで、菌床表面温度が設定室温よりも高くなり、発芽時のなめこ本来の発熱と菌柄の発熱との相乗効果で菌床温度が18℃以上となった場合などにも同様の奇形症状が発現します。
対策としては、発芽を確認してからの設定温度を下げることです。出来れば菌床温度を測定し、発芽後に菌床内部温度を16℃以下に抑えるように管理することで症状は改善されるはずです。

Q6.菌床表面に「赤水」が溜まるのですが?

A.「赤水」症状の原因は、菌床表面からの害菌混入の影響です。
なめこの場合、表面から何らかの害菌類の侵入を受けた場合にはこのような着色症状が発現します。
表面の水滴症状は、正常な場合でも生理的に生じますが、その場合は絶対に着色することなく、透明な水(呼吸水)となります。
原因としては、接種作業時のカビ等の混入、あるいは培養初期(接種後10日以内)のクーラーの風による害菌混入などが考えられますので、接種作業の見直しや培養初期の荒風対策を行ってみてください。

Q7.カニ目症状が治らないのですが?

A.なめこ栽培において、芽切りまでは良好でその後一部の芽しか育たずに大部分の芽が黒くなって腐ってしまう発芽不良の状態を「カニ目」と呼んでいます。
この症状の原因は、培養中期の温度の影響が考えられます。発熱が最大となる培養中期に温度が20℃以上に上昇した場合や熟成管理への移行時期が早い場合などに見受けられます。
現在の空調栽培用に開発された品種は、培養工程での温度管理に敏感で、発熱最盛期(接種後10~25日までの間)におけるビン間温度が20℃(ビン内温度で23℃)を越す状態が長く続くと温度障害を受けてしまいます。
それゆえ、菌糸蔓延完了(約25日間)を含めた30日間程度は、ビン間温度で20℃を越さないように管理することが大切です。
特に冬期間の培養管理においては、温度を押さえるためのクーラーを使用しない場合が多いことから、意外と高温障害を誘発するケースが見受けられます。培養での管理の基本は、ビン間温度を測定し、菌床の発熱が治まるまでは低めの温度管理を心がけることです。

Q8.ダニの発生原因と対策について教えてください

A.培養中のビンに害菌発生が多く、培養室の床に粉状のゴミが溜まる症状が見られる場合には、ダニの影響が考えられます。
床を掃除しても翌日に同様のゴミが生じているようであれば、間違いなくダニが原因です。床のゴミをセロテープで拾い、顕微鏡やルーペ(10倍)で確認してみてください。
きのこ栽培で一般的なのは「コナダニ属」の湿性タイプのダニです。
一部例外的には冬期間の乾燥時に発生する乾性タイプの「ホコリダニ属」のダニもいます。
対策は、何れも培養初期の侵入が原因ですので、接種後10日間を目安にビニルシート等で被覆を行い、ダニの侵入を防止するようにしてください。
なお、被害が重症な場合には、バクテリア等の他の要因が主因で、ダニは2次的に感染していることが考えられますので、その場合には、殺ダニ剤を散布してもあまり効果が期待できないため、主原因である殺菌不良の改善から根本的に見直しを行って対策を講じる必要があります。

Q9.発生が不揃いで収量が上がらないのですが?

A.発生が不揃いとなる原因としては、培養中期の高温管理と発生初期の湿度不足の影響が考えられます。
性能維持を前提に開発された最近の品種は、培養における発熱期間が長いことから、これまでの品種のように菌糸蔓延直後(接種25日程度)に昇温して熟成管理を行った場合には、高温障害を起こしてしまいます。
発熱が完全に治まるまではビン間温度で20℃を越さないように管理してください。また、発生操作直後の湿度が不足した場合、従来の品種と比べ発芽がばらつく傾向が見られます。
操作後の5日間は、絶対に菌床表面を乾燥させないようにしっかりと加湿管理を行ってください。
殺菌不良や培地発酵等の問題がなければ、これら2つのポイントをしっかりと守ってもらえば、発生状況は比較的簡単に改善するはずです。

Q10.きのこの品質を良くする方法を教えてください

A.現行の品種を使用してなめこの芽数を減らし、品質を向上させる方法には、栄養材の組み合せと含水率を調整する2つの方法があります。
添加栄養材の配合については、糖質系の栄養材(NFE)を減じて、タンパク質系の栄養材(CP)を増加させることで発生するきのこの本数を減らし、品質の向上を図ることが可能となります。
具体的には、NFEとCPの比率を目安としており、NFE/CP=3.0を基準値としています。この値より小さい組み合せに調整することで、品質の向上が図れます。
一般的な培地のNFE/CP値は3.2~3.6であるため、ネオビタスやオカラ等のタンパク質系の栄養材を増やすことで調整します。
もうひとつの品質決定要因である培地含水率については、高含水率になるほどきのこの品質は向上します。
そのため、含水率を高める方法としては、保水性の良好な基材の使用や栄養材の添加総量を減じることで含水率を高めることができます。
具体的には、栄養材の添加総量を培地総重量(水を添加した後の培地重量)に対して8%まで減らし、保水力があってタンパク質含量の高い乾燥オカラ等を混合使用することで、高品質のきのこの収穫が可能になります。

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