株式会社キノックス

きのこの豆知識・その1

生態系における役割

きのこは分解者(還元者)として、地球上の生態系における物質循環のシステムを維持するのに大きく貢献しています。すなわち、植物や動物の遺体などの有機物をきのこが分解して無機物へ還元し、最終的に土へ戻す働きをしているのです。地球上で植物、動物、そしてきのこに代表される菌類が共同生活を営むことで、有限少量の無機物を「合成」と「分解」とを繰り返し循環利用することによって、無限に生き続けることのできる道を切り開いたのだと言われております。

 具体的には、植物は土壌中の無機物を利用しながら光合成によって有機物を合成し(生産者)、植物の合成した有機物を動物、あるいは菌類が摂取することで、生活のためのエネルギーを獲得(消費者)しています。また、台風などで倒れた樹木や動物の死骸などの有機物は、バクテリアやきのこなどの菌類(分解者)の働きにより最終的には無機物までに分解され、再び植物の生長のために利用されるという物質循環を繰り返すことで、地球上の生態系が維持されているのです。

 それゆえ、きのこがまだ存在しなかった今から1億年ほど前の白亜紀以前の地球においては、植物や動物の遺体を分解する還元者(きのこ)がいなかったことで遺体がそのまま化石として残って地下で「石炭」となり、あるいは何らかの化学変化によって「石炭」が液状化して「石油」と言う化石エネルギーの形で残るようになったと言われております。すなわち、現在の文明の元となっている石油に代表される化石エネルギーは、きのこが存在しなかったことで成り立っているのであり、もし、動植物の起源と同時にきのこが存在していたならば、あるいは現在のような文明は成立しなかった可能性も否定できないのであります。

生態系と物質の循環の図 いずれにしろ、きのこが出現するようになってから、植物などの遺体の分解が進み、無機化され再利用されることになったことで、化石エネルギーは完全に地球上から消滅してしまう結果となってしまったのです。

 このようにきのこ類は、木材の分解のみならず、最近はダイオキシン類や内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)などの難分解性物質をも分解する能力を持っていることが判明して来ていることから、バイオレメディエーション(生物環境浄化)の分野においても脚光を浴びるようになっております。きのこは地球上に生活する全生物にとって、「森の掃除屋さん」としての働きのみならず、我々が想像する以上にもっと奥の深い所で地球環境保全と密接に関係しているのかもしれません。