きのこ驚きの秘密・その4 毒きのこの見分け方のポイント2 (神経系毒きのこ) 死に至る危険性のある循環器系の猛毒きのこの次は、幻覚症状や二日酔いなどの症状となる神経系の毒きのこについて説明します。神経系の毒きのこの中毒症状は、中枢神経や自律神経に作用するため、幻覚でビルなどから飛び降りたりしない限り、直接命に係ることはありません。昔は宗教儀式に使われたりしたことがありますが、現在はシロシビン群を含有するきのこは麻薬指定となっていますので、採取したり勝手に持ち歩くことが禁止されています。 1)中枢神経に作用するタイプの毒きのこ(幻覚性の毒きのこ) 中枢神経に作用して幻覚作用を引き起こす中毒タイプの代表的なきのこについて取りまとめてみました。一部には麻薬指定となっているきのこも含まれますので、取り扱いには注意が必要です。 ・テングタケ(写真) 麻薬指定とはなっていませんが、茶色いカサに白いツブツブが散りばめられた可愛いきのこです。色合いは茶色で地味なのですが、赤い傘のベニテングダケよりも毒性は強いと言われています。傘表面の白いイボが特徴で、ツバとツボがある典型的な毒きのこの形態をしています。似ているきのこにイボテングタケがありますが、これまでテングタケの変異型と考えられてきたのですが、最近は別種として区別されるようになっています。 イボテングタケとの識別ポイント テングタケ イボテングタケ ガンタケ テングタケダマシ 傘の大きさ 中型 大型 中型 小型 傘の色 茶色 茶色 赤褐色 茶色 傘のイボ(破片) 柔らかく、膜質 角張っていて、硬い 膜質で粉粒状 △に尖っている ツボのリング 1本の襟状リング 複数のリング 粉粒状の破片が環状に付着 リングなしイボが環状に付着ツバに縁取りがある (見分け方のポイント)①きのこは中型で、傘が暗褐色である(傘に条線あり)。②傘表面に白色で、膜質の柔らかい扁平なイボがある。③ツボのリングは、1本の襟状リングである。(類似の食用きのこ) ガンタケ(食注意)に似ていますが、ガンタケは傘に条線がなく、全体に赤みを帯びているので区別することができます。 ・ベニテングタケ(写真) もっとも馴染みのきのこで、毒きのこの代表のように思われていますが、それほど恐ろしい毒きのこではありません。主要な毒性分は、イボテン酸で、グルタミン酸に類似した構造を持つ水溶性の旨味系アミノ酸です。旨味は強いのですが、極めて不安定であるため、体内で中枢神経に作用する有害なムシモールへ変化してしまいます。神経伝達系を撹乱するアルカロイド系の代表的な有害物質であるムスカリンの含有量は、それほど多くないことが判明しています。(見分け方のポイント)①赤い傘に白色のツブツブのイボ(外被膜破片)が付着する(傘に条線あり)。②柄は白色で、ササクレ状である。③ツボの破片がイボとなって、柄の基部へ環状に付着する。 (類似の食用きのこ) 傘のイボが取れてしまったものは、食用のタマゴタケ(傘に条線より深い溝線あり)に似ています。タマゴタケは傘の周辺部にはっきりとした溝線があり、ヒダが黄色で、柄のダンダラ模様で区別ができます。柄にダンダラ模様のないセイヨウタマゴタケ(食)もありますので、注意が必要です。 識別のポイント ベニテングタケ タマゴタケ セイヨウタマゴタケ 傘の色 赤色 赤色 赤色 傘の条線 あり はっきりとした溝線 はっきりとした溝線 傘のイボ 白色粒状 なし なし ヒダの色 白色 黄色 黄色 ツバ 白色で膜質 橙黄色で膜質 橙黄色で膜質 ツボ イボ状破片が環状に付着(ツボの名残) 白色で厚膜質袋状 白色で厚膜質袋状 柄の色 白色 黄色 黄色 柄のリン片 ササクレ状 ダンダラ模様 なし(平滑) ・ヒカゲシビレタケ(写真) 麻薬指定きのこで、幻覚を引き起こす成分は、シロシビン、シロシンなどで、禁止薬物のLSDと同様に視覚系などの中枢神経を混乱させます。中毒症状は一過性で、数時間で回復します。シビレタケ属のきのこには酸化されると青く変色するシロシンが含まれ、見分け方のポイントとなります。比較的身近な環境で発生することが多いため、取り扱いに注意が必要です。(見分け方のポイント)①傘は平らに開かずに、中央部がとがる。②柄はダンダラ模様で、基部が白い繊維状の菌糸で覆われる。③傷つけると、青く変色する。(類似の食用きのこ) 麻薬指定きのこ類特有の「青変性」という特徴をしっかりと覚えておけば、類似した形状の食用きのことの区別は容易にできます。くれぐれも間違って採取しないよう、十分に注意してください。形が似たような食用きのことしては、コレラタケと同様のナラタケ(ツバより上部が白色)やナラタケモドキ(ナラタケと同様であるが、ツバのないタイプ)、さらにはセンボンイチメガサ(ツバの付き方は上向きで、ツバより上部が黄白色)などのきのこが対象となります。 2)中枢神経に作用するタイプの毒きのこ(非幻覚性の毒きのこ) イボテン酸やムシモールと言った幻覚性の毒成分は含まれていませんが、中枢神経に作用するアクロメリン酸やクリチジンと言った中毒症状が発症するまでに一週間程度を要する、特殊な毒成分を持った毒きのこのグループです。さわやかなきのこ臭があって、しかも味が温和であることから、食用きのこと間違えて採取してしまって重篤な中毒症状を引き起こすケースが多いため、絶対に食べたりしないように細心の注意が必要です。 ・ドクササコ(写真) 秋に広葉樹林や笹やぶなどに発生する傘の中央部がくぼんだ、地味な色(橙黄色)をしたきのこで、中枢神経毒を持った非常に怖い毒きのこです。さわやかなきのこ臭があって味も温和であるため、食用きのこと間違えて中毒する事故が後を絶ちません。手足の先が赤く腫れ上がって激しく痛み出す中毒症状を発症することから、ヤケドキンとも呼ばれています。(見分け方のポイント)①傘は橙黄色で、漏斗状となり、爪で押したような斑紋がある。②きのこ全体が繊維質で、強靭である。③基部が白色の綿毛状菌糸で覆われる。(類似の食用きのこ) 色や形がチチタケ(白い乳液を分泌)やアカハツ(オレンジ色の乳液を分泌)に、また、発生の仕方がナラタケ(ヒダが長い垂生とならない)に似ていることから、これらきのこと誤食しないように十分な注意が必要です。 識別のポイント ドクササゴ チチタケ アカハツ ナラタケ 傘の色 橙黄色 黄褐色でビロード状 橙黄色 淡黄色 傘の形 漏斗状爪で押したような斑紋 中央部が窪む饅頭型 中央が窪む饅頭型同心円環紋 饅頭型で 中央部に 褐色のリン片密生傘周条線あり ヒダの色 黄白色乳液なし 黄白色、傷で白色乳液分泌 橙黄色、傷で橙黄色の乳液分泌 白色乳液なし ヒダの着生 柄に長く垂生 やや垂生 やや垂生 短く垂生 柄の基部 白色綿毛状菌糸で覆われる 菌糸なし 菌糸なし柄に小クレータ模様 基部が太まり、柄の上部に淡黄白色の膜質のツバがある 3)自律神経系の毒きのこ(悪酔いする毒きのこ) コプリン、オクタデセン酸などはアルコール代謝の過程で働く酵素(アセトアルデヒドゲナーゼ)を阻害することで、体内のアセトアルデヒドの濃度が高くなってしまい、二日酔いの症状を引き起こす原因となります。このような自律神経系に作用して中毒症状を引き起こす毒きのこについて取りまとめてみました。 ・ホテイシメジ(写真) マツ林に発生する、歯ごたえがあってほんのり甘い香りのする、さっぱりした味のきのこです。普通に食べる分には問題ありませんが、アルコールと一緒に食べると悪酔いをしてしまいます。(見分け方のポイント)①傘は暗灰褐色、平滑で、漏斗型となる。②ヒダは白色で、強く垂生する。③柄は中実で、根元が太い。(類似の食用きのこ) 同じような形状をしたホテイダマシ(傘色に透明感があって、柄が細く、中空)に似ています。しかし、ホテイダマシはカラマツ林に発生する、酒で中毒しないタイプの食用きのこです。 ・ヒトヨタケ(写真) 一晩で溶けてしまうのが名前の由来で、庭や畑など身近な環境に発生するきのこで、傘の色は灰褐色をしています。アルコールを飲む前に食べると、悪酔いの中毒症状を発症します。毒性分は、コプリンと言うグルタミン酸に反応性の富んだ水溶性の物質です。コプリンの分解物がアセトアルデヒドを分解する酵素に結合して不活性化するため、アセトアルデヒドが酢酸に分解されずに体内に残ることから、悪酔いの原因となります。断酒薬として知られている「アンタビュース」と同じ作用機序を持っている毒きのこです。 (見分け方のポイント)①傘は円柱形で、中央部にリン片があり、周縁部に溝線がある。②ヒダは白色で、密である(白→黒に変色)。③柄にツボはなく、消失性の不完全なツバを持つ。(類似の食用きのこ) きのこの形は、幼菌時のササクレヒトヨタケ(傘にササクレ状のリン片があり、ツバは可動性)に似ています。しかし、ヒダが変色する前の幼菌時のササクレヒトヨタケは、歯ごたえがあった、さっぱりした味の酒で中毒することのない食用きのこです。 ・スギタケ(写真) 倒木や切り株に群生し、埋もれた木のあるところでは地上に発生するため、地上生で別種のツチスギタケ(傘中央部がやや隆起して、麦ワラ色でヌメリあり。食注意)と間違われることが多いきのこです。ヌメリはなく、全体が著しいササクレ状のリン片で覆われ、ヒトヨタケ同様にアルコールと一緒に食すると悪酔い症状を引き起こします。(見分け方のポイント)①傘に粘性がなく、ササクレ状のリン片で覆われる。②ヒダの色が緑黄色。③柄は傘同様のリン片で覆われ、ツバ上部が黄白色。(類似の食用きのこ) 幹の根元に発生し、傘と柄に強いヌメリのあるヌメリスギタケ(小型)、幹の上部に発生して柄にヌメリのないヌメリスギタケモドキ(大型)、全体が著しいヌメリで覆われ、リン片の目立たない優秀な食用きのこのナメコなどに似ていますので、誤食しないよう注意が必要です。 識別のポイント スギタケ ヌメリスギタケ ヌメリスギタケモドキ ナメコ 傘の色 黄白色 黄色 黄色 黄褐色 傘のリン片 褐色のササクレ状 褐色△型リン片 褐色△型大型のリン片 なし(平滑) 傘の粘性 ヌメリなし ヌメリあり ヌメリあり 超粘性 ヒダの色 緑黄色 淡黄色 黄白色 淡黄褐色 柄の色 ツバより上部黄白色下部は傘と同色 ツバより上部黄白色下部は傘同色のリン片 ツバより上部黄白色下部は褐色で繊維状リン片 ツバより上部が白色下部は黄白色 柄のリン片 ササクレ状 ササクレ状 ササクレ状 なし 柄の粘性 ヌメリなし ヌメリあり ヌメリなし 強粘性 ◆ きのこの驚きの秘密、目次ページへ戻る ◆
毒きのこの見分け方のポイント2 (神経系毒きのこ)
死に至る危険性のある循環器系の猛毒きのこの次は、幻覚症状や二日酔いなどの症状となる神経系の毒きのこについて説明します。神経系の毒きのこの中毒症状は、中枢神経や自律神経に作用するため、幻覚でビルなどから飛び降りたりしない限り、直接命に係ることはありません。昔は宗教儀式に使われたりしたことがありますが、現在はシロシビン群を含有するきのこは麻薬指定となっていますので、採取したり勝手に持ち歩くことが禁止されています。
1)中枢神経に作用するタイプの毒きのこ(幻覚性の毒きのこ)
中枢神経に作用して幻覚作用を引き起こす中毒タイプの代表的なきのこについて取りまとめてみました。一部には麻薬指定となっているきのこも含まれますので、取り扱いには注意が必要です。
・テングタケ(写真)
麻薬指定とはなっていませんが、茶色いカサに白いツブツブが散りばめられた可愛いきのこです。色合いは茶色で地味なのですが、赤い傘のベニテングダケよりも毒性は強いと言われています。傘表面の白いイボが特徴で、ツバとツボがある典型的な毒きのこの形態をしています。似ているきのこにイボテングタケがありますが、これまでテングタケの変異型と考えられてきたのですが、最近は別種として区別されるようになっています。
イボテングタケとの識別ポイント
テングタケ
イボテングタケ
ガンタケ
傘の大きさ
中型
大型
中型
傘の色
茶色
茶色
赤褐色
傘のイボ(破片)
柔らかく、膜質
角張っていて、硬い
膜質で粉粒状
ツボのリング
1本の襟状リング
複数のリング
粉粒状の破片が環状に付着
イボが環状に付着
ツバに縁取りがある
(見分け方のポイント)
①きのこは中型で、傘が暗褐色である(傘に条線あり)。
②傘表面に白色で、膜質の柔らかい扁平なイボがある。
③ツボのリングは、1本の襟状リングである。
(類似の食用きのこ)
ガンタケ(食注意)に似ていますが、ガンタケは傘に条線がなく、全体に赤みを帯びているので区別することができます。
・ベニテングタケ(写真)
もっとも馴染みのきのこで、毒きのこの代表のように思われていますが、それほど恐ろしい毒きのこではありません。主要な毒性分は、イボテン酸で、グルタミン酸に類似した構造を持つ水溶性の旨味系アミノ酸です。旨味は強いのですが、極めて不安定であるため、体内で中枢神経に作用する有害なムシモールへ変化してしまいます。神経伝達系を撹乱するアルカロイド系の代表的な有害物質であるムスカリンの含有量は、それほど多くないことが判明しています。
(見分け方のポイント)
①赤い傘に白色のツブツブのイボ(外被膜破片)が付着する(傘に条線あり)。
②柄は白色で、ササクレ状である。
③ツボの破片がイボとなって、柄の基部へ環状に付着する。
(類似の食用きのこ)
傘のイボが取れてしまったものは、食用のタマゴタケ(傘に条線より深い溝線あり)に似ています。タマゴタケは傘の周辺部にはっきりとした溝線があり、ヒダが黄色で、柄のダンダラ模様で区別ができます。柄にダンダラ模様のないセイヨウタマゴタケ(食)もありますので、注意が必要です。
識別のポイント
ベニテングタケ
タマゴタケ
セイヨウタマゴタケ
傘の色
赤色
赤色
赤色
傘の条線
あり
はっきりとした溝線
はっきりとした溝線
傘のイボ
白色粒状
なし
なし
ヒダの色
白色
黄色
黄色
ツバ
白色で膜質
橙黄色で膜質
橙黄色で膜質
ツボ
イボ状破片が環状に付着(ツボの名残)
白色で厚膜質袋状
白色で厚膜質袋状
柄の色
白色
黄色
黄色
柄のリン片
ササクレ状
ダンダラ模様
なし(平滑)
・ヒカゲシビレタケ(写真)
麻薬指定きのこで、幻覚を引き起こす成分は、シロシビン、シロシンなどで、禁止薬物のLSDと同様に視覚系などの中枢神経を混乱させます。中毒症状は一過性で、数時間で回復します。シビレタケ属のきのこには酸化されると青く変色するシロシンが含まれ、見分け方のポイントとなります。比較的身近な環境で発生することが多いため、取り扱いに注意が必要です。
(見分け方のポイント)
①傘は平らに開かずに、中央部がとがる。
②柄はダンダラ模様で、基部が白い繊維状の菌糸で覆われる。
③傷つけると、青く変色する。
(類似の食用きのこ)
麻薬指定きのこ類特有の「青変性」という特徴をしっかりと覚えておけば、類似した形状の食用きのことの区別は容易にできます。くれぐれも間違って採取しないよう、十分に注意してください。形が似たような食用きのことしては、コレラタケと同様のナラタケ(ツバより上部が白色)やナラタケモドキ(ナラタケと同様であるが、ツバのないタイプ)、さらにはセンボンイチメガサ(ツバの付き方は上向きで、ツバより上部が黄白色)などのきのこが対象となります。
2)中枢神経に作用するタイプの毒きのこ(非幻覚性の毒きのこ)
イボテン酸やムシモールと言った幻覚性の毒成分は含まれていませんが、中枢神経に作用するアクロメリン酸やクリチジンと言った中毒症状が発症するまでに一週間程度を要する、特殊な毒成分を持った毒きのこのグループです。さわやかなきのこ臭があって、しかも味が温和であることから、食用きのこと間違えて採取してしまって重篤な中毒症状を引き起こすケースが多いため、絶対に食べたりしないように細心の注意が必要です。
・ドクササコ(写真)
秋に広葉樹林や笹やぶなどに発生する傘の中央部がくぼんだ、地味な色(橙黄色)をしたきのこで、中枢神経毒を持った非常に怖い毒きのこです。さわやかなきのこ臭があって味も温和であるため、食用きのこと間違えて中毒する事故が後を絶ちません。手足の先が赤く腫れ上がって激しく痛み出す中毒症状を発症することから、ヤケドキンとも呼ばれています。
(見分け方のポイント)
①傘は橙黄色で、漏斗状となり、爪で押したような斑紋がある。
②きのこ全体が繊維質で、強靭である。
③基部が白色の綿毛状菌糸で覆われる。
(類似の食用きのこ)
色や形がチチタケ(白い乳液を分泌)やアカハツ(オレンジ色の乳液を分泌)に、また、発生の仕方がナラタケ(ヒダが長い垂生とならない)に似ていることから、これらきのこと誤食しないように十分な注意が必要です。
識別のポイント
ドクササゴ
チチタケ
アカハツ
ナラタケ
傘の色
橙黄色
黄褐色でビロード状
橙黄色
淡黄色
傘の形
漏斗状
爪で押したような斑紋
中央部が窪む饅頭型
中央が窪む饅頭型
同心円環紋
饅頭型で 中央部に 褐色のリン片密生
傘周条線あり
ヒダの色
黄白色
乳液なし
黄白色、傷で白色乳液分泌
橙黄色、傷で橙黄色の乳液分泌
白色
乳液なし
ヒダの着生
柄に長く垂生
やや垂生
やや垂生
短く垂生
柄の基部
白色綿毛状菌糸で覆われる
菌糸なし
菌糸なし
柄に小クレータ模様
基部が太まり、柄の上部に淡黄白色の膜質のツバがある
3)自律神経系の毒きのこ(悪酔いする毒きのこ)
コプリン、オクタデセン酸などはアルコール代謝の過程で働く酵素(アセトアルデヒドゲナーゼ)を阻害することで、体内のアセトアルデヒドの濃度が高くなってしまい、二日酔いの症状を引き起こす原因となります。このような自律神経系に作用して中毒症状を引き起こす毒きのこについて取りまとめてみました。
・ホテイシメジ(写真)
マツ林に発生する、歯ごたえがあってほんのり甘い香りのする、さっぱりした味のきのこです。普通に食べる分には問題ありませんが、アルコールと一緒に食べると悪酔いをしてしまいます。
(見分け方のポイント)
①傘は暗灰褐色、平滑で、漏斗型となる。
②ヒダは白色で、強く垂生する。
③柄は中実で、根元が太い。
(類似の食用きのこ)
同じような形状をしたホテイダマシ(傘色に透明感があって、柄が細く、中空)に似ています。しかし、ホテイダマシはカラマツ林に発生する、酒で中毒しないタイプの食用きのこです。
・ヒトヨタケ(写真)
一晩で溶けてしまうのが名前の由来で、庭や畑など身近な環境に発生するきのこで、傘の色は灰褐色をしています。アルコールを飲む前に食べると、悪酔いの中毒症状を発症します。毒性分は、コプリンと言うグルタミン酸に反応性の富んだ水溶性の物質です。コプリンの分解物がアセトアルデヒドを分解する酵素に結合して不活性化するため、アセトアルデヒドが酢酸に分解されずに体内に残ることから、悪酔いの原因となります。断酒薬として知られている「アンタビュース」と同じ作用機序を持っている毒きのこです。
(見分け方のポイント)
①傘は円柱形で、中央部にリン片があり、周縁部に溝線がある。
②ヒダは白色で、密である(白→黒に変色)。
③柄にツボはなく、消失性の不完全なツバを持つ。
(類似の食用きのこ)
きのこの形は、幼菌時のササクレヒトヨタケ(傘にササクレ状のリン片があり、ツバは可動性)に似ています。しかし、ヒダが変色する前の幼菌時のササクレヒトヨタケは、歯ごたえがあった、さっぱりした味の酒で中毒することのない食用きのこです。
・スギタケ(写真)
倒木や切り株に群生し、埋もれた木のあるところでは地上に発生するため、地上生で別種のツチスギタケ(傘中央部がやや隆起して、麦ワラ色でヌメリあり。食注意)と間違われることが多いきのこです。ヌメリはなく、全体が著しいササクレ状のリン片で覆われ、ヒトヨタケ同様にアルコールと一緒に食すると悪酔い症状を引き起こします。
(見分け方のポイント)
①傘に粘性がなく、ササクレ状のリン片で覆われる。
②ヒダの色が緑黄色。
③柄は傘同様のリン片で覆われ、ツバ上部が黄白色。
(類似の食用きのこ)
幹の根元に発生し、傘と柄に強いヌメリのあるヌメリスギタケ(小型)、幹の上部に発生して柄にヌメリのないヌメリスギタケモドキ(大型)、全体が著しいヌメリで覆われ、リン片の目立たない優秀な食用きのこのナメコなどに似ていますので、誤食しないよう注意が必要です。
識別のポイント
スギタケ
ヌメリスギタケ
ヌメリスギタケモドキ
ナメコ
傘の色
黄白色
黄色
黄色
黄褐色
傘のリン片
褐色のササクレ状
褐色△型リン片
褐色△型
大型のリン片
なし(平滑)
傘の粘性
ヌメリなし
ヌメリあり
ヌメリあり
超粘性
ヒダの色
緑黄色
淡黄色
黄白色
淡黄褐色
柄の色
ツバより上部黄白色
下部は傘と同色
ツバより上部黄白色
下部は傘同色の
リン片
ツバより上部黄白色
下部は褐色で繊維状リン片
ツバより上部が白色
下部は黄白色
柄のリン片
ササクレ状
ササクレ状
ササクレ状
なし
柄の粘性
ヌメリなし
ヌメリあり
ヌメリなし
強粘性