きのこ驚きの秘密・その4 毒きのこのタイプ分類 毒きのこの成分は、主にペプチドやアミノ酸など窒素を含んだ化合物が主体となっています。毒性分ときのこの種類との関係は独立しており、同じ成分であっても科は異なることが多いのです。すなわち、同じ科のきのこであっても含まれる毒成分はそれぞれに異なるのです。きのこ中毒の発現症状は、大きく3つのグループに分かれます。具体的には、①致命的な症状を引き起こす循環器系の毒きのこのグループで、肝臓や腎臓などに障害を与え、多臓器不全を引き起こして死に至らしめる非常に怖い猛毒きのこです。次が、②神経系の毒きのこのグループで、中枢神経や自律神経に作用し、神経系の異常を引き起こしますが、直接死に至ることはありません。最後が、③消化器系の毒きのこのグループで、嘔吐や下痢など胃腸系に障害を起こす最も一般的な中毒症状の毒きのこです。以下に、代表的な中毒症状を毒きのこのタイプ別に表にまとめてみました。また、きのこの種類別の中毒発生状況については、グラフに示した通りです。中毒を引き起こす代表的な毒きのこの種類は、クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジとほぼ順番が決まっており、「食中毒御三家きのこ」と呼ばれていたのですが、平成23年以降はクサウラベニタケによる中毒事故は激減しているのです。類似のウラベニホテイシメジは「きのこ通」に人気で、一般人はあまり食べなくなってきているのかもしれません。時代とともに、食の対象となる野生きのこの種類が変わってきているものと思われます。 1)循環器系毒(致命的な猛毒きのこ)肝臓、腎臓に傷害を与えるタイプの猛毒きのこ 主なきのこ (猛毒御三家きのこ)ドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケ 中毒症状 食後6時間程度経過してから、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現し、一旦は回復する。しかし、その後1週間位してから肝臓肥大や黄疸、内臓破壊による出血が見られるようになり、多臓器不全で死に至る。 毒成分 主要な毒成分は、環状ペプチド類のアマニタトキシン。 主なきのこ フクロツルタケ 中毒症状 嘔吐、下痢などの胃腸系障害の他、言語障害と言った神経系の中毒を引き起こし、多臓器不全で死に至ることもある。 毒成分 毒成分は、不明。 主なきのこ コレラタケ、ヒメアジロガサ、タマゴタケモドキ 中毒症状 ドクツルタケと同様の中毒症状。食後6時間程度経過してから、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現し、一旦は回復する。その後1週間位してから肝臓肥大や黄疸、内臓破壊による出血が見られるようになり、多臓器不全で死に至る。 毒成分 主要な毒成分は、アマニタトキシン。 主なきのこ ニセクロハツ 中毒症状 食後数十分程度で嘔吐、下痢など胃腸系の症状が現れ、その後血尿(横紋菌融解の症状)が出て、心臓衰弱のために死に至る。 毒成分 主要な毒成分は、シクロプロペンカルボン酸。 主なきのこ シャグマアミガサタケ 中毒症状 食後4時間程度で、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現。その後肝臓や腎臓障害を発症して、多臓器不全で死に至る。アマニタトキシンによる中毒症状と類似する。毒成分は極めて揮発性が高いため、調理中に発生する蒸気(ガス)を吸って中毒することもある。 毒成分 主要な毒成分は、ジロミトリン、ヒドラゾン化合物。 主なきのこ カエンタケ 中毒症状 食後30分程度で嘔吐、腹痛などの胃腸系症状が現れた後、悪寒や頭痛、手足のしびれと言った神経系の中毒症状を発現する。その後、肝不全や腎不全、循環器系など全身不全が発症し、多臓器不全のために死に至る。毒成分は皮膚刺激性が高いため、触るだけでも炎症を起こす。 毒成分 主要な毒成分は、トリコテセン。 2-①)神経系毒(中枢神経)中枢神経に作用するタイプの毒きのこ 主なきのこ ベニテングタケ、テングタケ、イボテングタケ 中毒症状 食後30分程度で嘔吐、腹痛などの胃腸系症状の他、発汗や頻脈、心拍数増加などの交感神経系、さらにはめまいや幻覚、興奮と言った中枢神経系の症状を併発する。しかし、大抵は、1日程度で症状が回復する。 毒成分 主要な毒成分は、イボテン酸、ムシモール。 主なきのこ (麻薬指定きのこ:シロシビン群を含有するきのこ)ワライタケ、センボンサイギョウガサ、ヒカゲシビレタケ、オオシビレタケなど13種。 中毒症状 食後30分程度で発汗、呼吸困難などのムスカリン中毒(交感神経系)、さらには頭痛や悪寒、平衡感覚の喪失、幻覚、精神撹乱などシロシビン中毒(中枢神経系)の症状を引き起こす。 毒成分 主要な毒成分は、コリン、アセチルコリン、シロシビン。 主なきのこ カヤタケ、コカブノイヌシメジ、オオキヌハダトマヤタケ 中毒症状 食後30分程度で発汗や呼吸困難、よだれ、血圧低下などのムスカリン中毒(交感神経系)の症状を引き起こす。 毒成分 主要な毒成分は、ムスカリン。 主なきのこ オオワライタケ 中毒症状 シロシビンは検出されていないが、幻覚や幻聴、視覚障害などの中枢神経系の中毒症状を引き起こす。毒性はシビレタケ属より弱い。 毒成分 主要な毒成分は、ジムノピリン。 主なきのこ ドクササコ 中毒症状 食後早い場合で6時間程度、遅い場合は1週間程度してから手足の先端が赤く腫れ上る症状が発現し、激しく痛み出す。痛みの症状は、1ヶ月以上も継続する。 毒成分 主要な毒成分は、アクロメリン酸、クリチジン。 2-②)神経系毒(自律神経)二日酔い症状となるタイプの毒きのこ 主なきのこ ホテイシメジ、ヒトヨタケ、スギタケ 中毒症状 アルコールと共に食べると30分程度で、顔が赤くほてって、頭痛や発汗、呼吸困難、頻脈などの悪酔い症状が発現する。通常は数時間で治まるが、ホテイシメジは1週間程度の禁酒が必要となる。 毒成分 主要な毒成分は、コプリン、オクタデセン酸。 3)消化器系毒胃腸系に作用するタイプの毒きのこ 主なきのこ (食中毒御三家きのこ)ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ 中毒症状 食後30分位で嘔吐や腹痛、下痢などの典型的な胃腸系の中毒症状を引き起こす。カキシメジは頭痛を伴い、クサウラベニタケは神経系のムスカリン中毒の症状を併発する。 毒成分 主要な毒成分は、イルジン、ウスタル酸、溶血性タンパク。 主なきのこ ニガクリタケ、ドクヤマドリ、ドクベニタケ、ハナホウキタケ 中毒症状 食後数十分程度で嘔吐や腹痛、下痢などの典型的な胃腸系の中毒症状が発現する。重篤な場合は、脱水症状を引き起こす。ドクベニタケは神経系のムスカリン中毒の症状を併発する。 毒成分 主要な毒成分は、ファシキュロール、ボレベニン、溶血性タンパク。 昭和63年までは、クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジが「食中毒御三家きのこ」であったが、平成23年以降はツキヨタケが主体となり、クサウラベニタケによる中毒事故は激減している。 ◆ きのこの驚きの秘密、目次ページへ戻る ◆
毒きのこのタイプ分類
毒きのこの成分は、主にペプチドやアミノ酸など窒素を含んだ化合物が主体となっています。毒性分ときのこの種類との関係は独立しており、同じ成分であっても科は異なることが多いのです。すなわち、同じ科のきのこであっても含まれる毒成分はそれぞれに異なるのです。きのこ中毒の発現症状は、大きく3つのグループに分かれます。具体的には、①致命的な症状を引き起こす循環器系の毒きのこのグループで、肝臓や腎臓などに障害を与え、多臓器不全を引き起こして死に至らしめる非常に怖い猛毒きのこです。次が、②神経系の毒きのこのグループで、中枢神経や自律神経に作用し、神経系の異常を引き起こしますが、直接死に至ることはありません。最後が、③消化器系の毒きのこのグループで、嘔吐や下痢など胃腸系に障害を起こす最も一般的な中毒症状の毒きのこです。以下に、代表的な中毒症状を毒きのこのタイプ別に表にまとめてみました。また、きのこの種類別の中毒発生状況については、グラフに示した通りです。中毒を引き起こす代表的な毒きのこの種類は、クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジとほぼ順番が決まっており、「食中毒御三家きのこ」と呼ばれていたのですが、平成23年以降はクサウラベニタケによる中毒事故は激減しているのです。類似のウラベニホテイシメジは「きのこ通」に人気で、一般人はあまり食べなくなってきているのかもしれません。時代とともに、食の対象となる野生きのこの種類が変わってきているものと思われます。
1)循環器系毒(致命的な猛毒きのこ)
肝臓、腎臓に傷害を与えるタイプの猛毒きのこ
主なきのこ
(猛毒御三家きのこ)
ドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケ
中毒症状
食後6時間程度経過してから、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現し、一旦は回復する。
しかし、その後1週間位してから肝臓肥大や黄疸、内臓破壊による出血が見られるようになり、多臓器不全で死に至る。
毒成分
主要な毒成分は、環状ペプチド類のアマニタトキシン。
主なきのこ
フクロツルタケ
中毒症状
嘔吐、下痢などの胃腸系障害の他、言語障害と言った神経系の中毒を引き起こし、多臓器不全で死に至ることもある。
毒成分
毒成分は、不明。
主なきのこ
コレラタケ、ヒメアジロガサ、タマゴタケモドキ
中毒症状
ドクツルタケと同様の中毒症状。食後6時間程度経過してから、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現し、一旦は回復する。
その後1週間位してから肝臓肥大や黄疸、内臓破壊による出血が見られるようになり、多臓器不全で死に至る。
毒成分
主要な毒成分は、アマニタトキシン。
主なきのこ
ニセクロハツ
中毒症状
食後数十分程度で嘔吐、下痢など胃腸系の症状が現れ、その後血尿(横紋菌融解の症状)が出て、心臓衰弱のために死に至る。
毒成分
主要な毒成分は、シクロプロペンカルボン酸。
主なきのこ
シャグマアミガサタケ
中毒症状
食後4時間程度で、コレラ様症状(嘔吐、腹痛、下痢)が発現。その後肝臓や腎臓障害を発症して、多臓器不全で死に至る。
アマニタトキシンによる中毒症状と類似する。毒成分は極めて揮発性が高いため、調理中に発生する蒸気(ガス)を吸って中毒することもある。
毒成分
主要な毒成分は、ジロミトリン、ヒドラゾン化合物。
主なきのこ
カエンタケ
中毒症状
食後30分程度で嘔吐、腹痛などの胃腸系症状が現れた後、悪寒や頭痛、手足のしびれと言った神経系の中毒症状を発現する。
その後、肝不全や腎不全、循環器系など全身不全が発症し、多臓器不全のために死に至る。
毒成分は皮膚刺激性が高いため、触るだけでも炎症を起こす。
毒成分
主要な毒成分は、トリコテセン。
2-①)神経系毒(中枢神経)
中枢神経に作用するタイプの毒きのこ
ベニテングタケ、テングタケ、イボテングタケ
中毒症状
食後30分程度で嘔吐、腹痛などの胃腸系症状の他、発汗や頻脈、心拍数増加などの交感神経系、さらにはめまいや幻覚、興奮と言った中枢神経系の症状を併発する。しかし、大抵は、1日程度で症状が回復する。
毒成分
主要な毒成分は、イボテン酸、ムシモール。
主なきのこ
(麻薬指定きのこ:シロシビン群を含有するきのこ)
ワライタケ、センボンサイギョウガサ、ヒカゲシビレタケ、オオシビレタケなど13種。
中毒症状
食後30分程度で発汗、呼吸困難などのムスカリン中毒(交感神経系)、さらには頭痛や悪寒、平衡感覚の喪失、幻覚、精神撹乱などシロシビン中毒(中枢神経系)の症状を引き起こす。
毒成分
主要な毒成分は、コリン、アセチルコリン、シロシビン。
主なきのこ
カヤタケ、コカブノイヌシメジ、オオキヌハダトマヤタケ
中毒症状
食後30分程度で発汗や呼吸困難、よだれ、血圧低下などのムスカリン中毒(交感神経系)の症状を引き起こす。
毒成分
主要な毒成分は、ムスカリン。
主なきのこ
オオワライタケ
中毒症状
シロシビンは検出されていないが、幻覚や幻聴、視覚障害などの中枢神経系の中毒症状を引き起こす。毒性はシビレタケ属より弱い。
毒成分
主要な毒成分は、ジムノピリン。
主なきのこ
ドクササコ
中毒症状
食後早い場合で6時間程度、遅い場合は1週間程度してから手足の先端が赤く腫れ上る症状が発現し、激しく痛み出す。
痛みの症状は、1ヶ月以上も継続する。
毒成分
主要な毒成分は、アクロメリン酸、クリチジン。
2-②)神経系毒(自律神経)
二日酔い症状となるタイプの毒きのこ
ホテイシメジ、ヒトヨタケ、スギタケ
中毒症状
アルコールと共に食べると30分程度で、顔が赤くほてって、頭痛や発汗、呼吸困難、頻脈などの悪酔い症状が発現する。
通常は数時間で治まるが、ホテイシメジは1週間程度の禁酒が必要となる。
毒成分
主要な毒成分は、コプリン、オクタデセン酸。
3)消化器系毒
胃腸系に作用するタイプの毒きのこ
主なきのこ
(食中毒御三家きのこ)
ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ
中毒症状
食後30分位で嘔吐や腹痛、下痢などの典型的な胃腸系の中毒症状を引き起こす。
カキシメジは頭痛を伴い、クサウラベニタケは神経系のムスカリン中毒の症状を併発する。
毒成分
主要な毒成分は、イルジン、ウスタル酸、溶血性タンパク。
主なきのこ
ニガクリタケ、ドクヤマドリ、ドクベニタケ、ハナホウキタケ
中毒症状
食後数十分程度で嘔吐や腹痛、下痢などの典型的な胃腸系の中毒症状が発現する。
重篤な場合は、脱水症状を引き起こす。
ドクベニタケは神経系のムスカリン中毒の症状を併発する。
毒成分
主要な毒成分は、ファシキュロール、ボレベニン、溶血性タンパク。
昭和63年までは、クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジが「食中毒御三家きのこ」であったが、平成23年以降はツキヨタケが主体となり、クサウラベニタケによる中毒事故は激減している。