株式会社キノックス

きのこの豆知識・その3

きのこの出現時期

【質問】
 きのこはいつから地球上に生存するようになったのですか?


【答え】
10億年前に海の中で動物から分かれた菌類は、先ず「ツボカビ門」に進化し、その後、4億年前に原始的なカビの仲間である「アーバスキュラー菌根菌(菌と根の複合体)」が含まれる「接合菌門」に進化することで、鞭毛を喪失して陸上へ進出しました。これがきのこの先祖ですが、アーバスキュラー菌根菌はきのこ(子実体)を形成しません。きのこを形成するようになるのは2億年前からで、「子のう菌門」と「担子菌門」の腐生型きのこが出現してからです。そのため、答えとしては、2憶年前と言うことになります。植物の根と共生型の菌根きのこは、腐生菌よりもっと後に出現したと言われています。
 きのこを形成するグループである「担子菌類」と「子のう菌類」は、植物が海から陸上に上陸したと言われる今から4億年ほど前に共通の祖先から別れ、現在のハラタケ類のきのこは、恐竜時代の終わりである2億年ほど前の「白亜紀」時代に地球上に出現したと言われております。きのこの体は柔らかいために分解が早く、単独の化石としては残り難いのですが、アメリカで9,500万年前の白亜紀の地層から発見された琥珀の中に残されたキシメジ科に属するきのこの化石は、当時の存在を物語っているものです。きのこが地球上に出現する以前の時代(中生代以前)においては、植物や動物の死骸を分解する生物がいなかったため、地球上に繁茂していた森林の有機物などの遺体が土に埋もれ、長い年月を経て石炭や原油などに変化したと言われています。
 地球上にきのこが出現するようになった結果、これら有機物の遺体が分解されて無機物となり「土」に還元されるようになったことで、石炭などの「化石エネルギー」ができなくなってしまったのです。逆の見方をすれば、有限な地球の資源を「きのこ」を通じて植物などの光合成生物が循環利用できるようになったと言えます。
動物や植物の死骸をきのこが分解して直接土に還す物質循環、さらには、植物の根との共生や呼吸で生じる炭酸ガスの供給関係を営むことで、植物を通しての光合成による酸素循環にも貢献していることから、まさに森と共生して進化し、多様化を成し遂げた生物と言えるのです。きのこは分解者としての物質循環の他、炭酸ガスの発生源として、二度の氷河期で危機に見舞われた地球の生態系を救済したとも言われ、太古の時代から地球の進化と深く関わっており、「影の主役」として貢献してきたのです。

きのこ出現の時代比較表
※地球上で起きた二度の生物大量絶滅の危機を、きのこの菌糸が吐き出す炭酸ガスにより地上の温度を上げたことで、冷温環境から地球の生命体を救済したと言われています。
きのこ出現の時代比較表、拡大図