株式会社キノックス

きのこ驚きの秘密・その4

毒きのこの見分け方のポイント3 (消化器系毒きのこ)

きのこ中毒の中で最も多く報告されているのが、消化器系の毒きのこです。命に係わるような毒成分は含有していませんが、人気の食用きのこと類似したきのこが多いことから、秋のきのこシーズンになると毒きのこによる中毒事故が毎年のように報道されるきのこが属するグループです。消化器系の中毒を起こす代表的な毒きのこは特定の種(食中毒御三家)に決まっていますので、間違って採取しないようにするためには、これらきのこの特徴をしっかりと覚えておく必要があります。

・カキシメジ(写真)
 雑木林に発生する赤味を帯びたジメジ型の地味な色をした食中毒御三家のひとつで、シメジと名は付きますが、ウスタル酸という下痢や嘔吐と言った胃腸系の中毒症状を引き起こす成分を持った毒きのこです。地味な色をしていることから、昔からの迷信に当てはまらないため、中毒事故が多く報告されています。極めて類似したきのこに、弱い苦味と灰汁のような匂いのする広葉樹型のカキシメジと異なり、マツ林に発生する針葉樹型のカキシメジがあります。柄が中実で、上部の色が白色、下部の色(茶褐色の繊維紋)とはっきり異なり、ヒダも白色という特性を有していることから、マツシメジと呼んでカキシメジとは異なる「種」として区別されています。マツシメジ(針葉樹型のカキシメジ)は広葉樹型とは異なるきのことして、食用に供している地域もあります。
(見分け方のポイント)
①ヒダが淡く着色しており、赤褐色のシミがある。
②柄が中空で、全体が赤褐色を帯び、基部が褐色のシミとなる。
③肉に強い粉臭(灰汁のような臭い)がある。
(類似の食用きのこ)
 広葉樹に発生するチャナメツムタケ(ヒダや柄にシミなし)やはたけしめじ(柄が赤味を帯びない)に似ていることから、同じような傘色をしたヒダに赤褐色のシミのあるきのこは食べないように気を付ける必要があります。

 

識別のポイント

 

カキシメジ

マツシメジ

チャナメツムタケ

はたけしめじ

傘の色

赤褐色

赤褐色

茶褐色
粘性あり

黄褐色
白いカスリ模様

ヒダの色

白黄色
(淡く着色)

白色

白色

白色

ヒダのシミ 褐色のシミ わずかに褐色化 なし なし

柄の色

白色

上部白色
下部茶褐色の
繊維紋が密生

上部白色
下部褐色
ササクレあり

上部白色
下部傘と同色

柄の基部

褐色のシミ

シミなし

シミなし

シミなし
数本が合着

柄の肉質

髄状

中実

中実

中空

匂い

強い灰汁臭
弱い苦味あり

弱い菌臭あり
苦味なし

やや土臭い

無味無臭

・ツキヨタケ(写真)
 広葉樹の倒木や枯れ木などに多数が重なりあって発生し、カキシメジ同様毎年のように中毒の報告例の多い食中毒御三家きのこです。イルジンという下痢や嘔吐と言った胃腸系の中毒を引き起こす毒成分が含まれています。昼間には判らないのですが、夜になるとヒダの部分が青白く発光します。傘色は地味なのですが変化に富み、食用で人気のムキタケやヒラタケなどと極めて似た色に変化することもあり、しかも、同じ倒木上に発生することもあることから、中毒の報告が多く見受けられます。
(見分け方のポイント)
①柄の頂部にリング状のツバが変形した突起(環帯)を有する。
②柄の根元の肉に黒紫色のシミがある。
③ヒダに紫色のシミができる。
(類似の食用きのこ)
 食用きのことして人気のムキタケとは形や色が似ており、ヒラタケやシイタケと似たような傘色となる場合もあることから、採取の際は注意が必要です。誤食を避けるためには、柄の根元の黒いシミやリング状の隆起(環帯)と言ったはっきりとした見分け方の特徴をしっかり覚えることがポイントです。

 

識別のポイント

 

ツキヨタケ

ムキタケ

ヒラタケ

シイタケ

傘の色

紫褐色~黄橙褐色
(変化に富む)

黄褐色
(変化に富む)
表皮が向け易い

青灰色

茶褐色

ヒダの色

白色(変化に富む)

乳白色

白色

白色

ヒダのシミ

紫色のシミ
発光性あり

なし

なし

古くなると褐色のシミ

柄の色

黄褐色

黄褐色の微毛

白色

ツバ上部白色
下部淡褐色

柄の基部

根元の肉に黒紫色のシミ

微毛が密生

白毛密生

ササクレ状

柄の付方

偏心生

偏心生

偏心生

中心生

ツバ

柄の頂部に環帯あり(ツバの変形)

なし

なし

消失性の綿毛状ツバ

・クサウラベニタケ(写真)
 日本で最も中毒例の多い食中毒御三家のひとつです。食用のウラベニホテイシメジと極めてよく似ており、その区別が非常に困難であることから、別名「名人泣かせ」とも呼ばれるきのこです。溶血性タンパクによる中毒症状で、嘔吐や下痢と言った胃腸系の中毒症状を引き起こします。同様の毒きのこであるイッポンシメジともよく似ており、最近はシミイッポンシメジ(仮称)やミダレウラベニシメジ(仮称)、オキナウラベニタケ(仮称)などと言った新しい名称の類似きのこが見つかっていますので、将来研究が進むことでイッポンシメジは、複数の種に分けられる可能性があります。
(見分け方のポイント)
①粉臭と弱い不快臭が混在する(名前の由来)。
②肉に苦味がない。
③絹糸状の光沢があり、柄は中空で脆く、上部が粉状で、基部の先が尖って微毛で覆われる。
(類似の食用きのこ)
 傘がかすり模様で、指で押し付けたような斑紋が特徴である食用のウラベニホテイシメジ(苦味あり)や柄が中実でしっかりとしたイッポンシメジ(苦味なし)などの毒きのこに極めて類似していることから、少しでも迷った場合には食べないことが基本です。本種よりもウラベニホテイシメジに似ているイッポンシメジは、最近いくつかの種に細分されるようになっていますが、いずれも味に苦味のない点が共通しています。ホンシメジやはたけしめじにも類似しますが、これらのきのこはヒダが白色で、ピンク色に変色しないことで区別ができます。

 

識別のポイント

 

クサウラ
ベニタケ

ウラベニ
ホテイシメジ

イッポン
シメジ

ホン
シメジ

ハタケ
シメジ

傘の色

灰橙色

褐灰色

灰白色

 

灰褐色

褐色

傘の特徴

絹糸状の光沢あり
吸水性あり
条線あり

白いカスリ模様
指で押したような斑紋

平滑

 

放射状繊維紋

白いカスリ模様

ヒダの色

白→肌色

白→肌色

白→肌色

白色

白色

柄の色

白色
光沢あり

白色条線あり

白色条線あり

白色

上部白色
下部傘同色

柄の肉質

中空で脆い

太く頑強
中実

中間の肉質
中実

堅肉
中実

堅肉
中空

柄の基部

先が尖って微毛密生

基部が深く潜り込む

やや尖る

基部が丸い

基部が太まり数本が合着

食味

苦味なし
粉臭あり

苦味あり
粉臭あり

苦味なし
弱い異臭

旨味と温和臭

無味無臭

・ニガクリタケ(写真)
 春~晩秋までの広い期間にわたって、広葉樹や針葉樹の切り株や枯れた幹などに多数群生するきのこです。ファシキュロール類を主体とする嘔吐や下痢などの消化器系の中毒を引き起こします。ひどい場合には痙攣やショック症状などを併発して死亡する場合もある、怖い猛毒きのこです。ニガクリタケモドキ(食)など日本でニガクリタケと呼ばれているきのこには、複数種が含まれている可能性があります。
(見分け方のポイント)
①ヒダが硫黄色である(古くなると暗オリーブ緑色)。
②肉は黄色で、極めて強い苦味がある。
③柄のツバ跡頂部に褐色の条線がある。
(類似の食用きのこ)
傘の色が栗色で、周縁部に綿毛状のリン片を持ち、クモの巣状のツバを持たないクリタケ(ヒダは黄白色で、暗オリーブ緑色を帯びない)や傘の色がニガクリタケと同色で、針葉樹型のクリタケモドキ(ニセクリタケ:束生で苦味なし)やニガクリタケモドキ(単生で苦味なし)などの食用きのこに似ていることから、疑わしい場合には絶対に食べないことが基本です。


識別のポイント

 

ニガクリタケ

クリタケ

クリタケモドキ 
(ニセクリタケ)

ニガクリタケモドキ

傘の色

黄色

栗色

栗色

黄色

傘のリン片

傘周にクモの巣状の被膜

傘周にクモの巣状の被膜

平滑

傘周にクモの巣状の被膜

ツバ

クモの巣状痕跡被膜

なし

なし

クモの巣状痕跡

ヒダの色

硫黄色(暗オリーブ緑色)

白→紫褐色

黄→紫褐色

硫黄色(暗オリーブ緑色)

柄の色

傘と同色

上部白色
下部錆色

上部黄色
下部褐色

傘と同色

柄の肉質

中空

中実

中実

中空

柄の基部

ツバ上部に褐色の条線

株状発生

株状発生

株にならない

食味

強い苦味

苦味なし

苦味なし

苦味なし

発生状況

束生

束生

束生

単生

・ハナホウキタケ(写真)
 傘はなく、枝サンゴのような形をした美しいきのこで、いろいろな林内の地上、または枯れ木に発生します。大きさや色はまちまちで、赤~肌色、オレンジ色~黄色、白~茶色など様々な色をしています。毒成分は不明ですが、嘔吐や下痢と言った典型的な胃腸系の中毒症状を引き起こします。キホウキタケ(レモン色で、変色性あり)やコガネホウキタケ(黄金色で、根元が白色)などの黄色タイプ、赤色タイプ、白色タイプなどに分かれますが、共通の特徴は、①サンゴ型をしていること、②胞子紋が黄色味を帯びること、などです。食可能な種も含まれていると言われていますが、不明種も多いことから、安易な食用は避けるべきです。
(見分け方のポイント)
①全体的、あるいは枝の頂部が黄色に着色する(中毒タイプ)。
②根元が小さく、枝分かれが深い。
③きのこが弾力性に欠け、脆い。
(類似の食用きのこ)
 基部が大きな塊状となり、枝の先端部が淡紅色に着色(黄色味を帯びない)する食用のホウキタケ(変色性なし)に類似することから、きのこを採取する際には細心の注意が必要です。ホウキタケの仲間のきのこは、名前の付いていない未知種が多く、食毒も不明であるため、中毒を防止するためには、しっかりと見分けができるきのこ以外は、絶対に食べないことが基本です。