株式会社キノックス

きのこ驚きの秘密・その4

毒きのこの見分け方のポイント1 (循環器系毒きのこ)

毒きのこによる中毒事故をなくすためには、類似した食用きのこと見分ける必要があります。見分け方の参考となるよう、代表的な毒きのこの特徴と見分け方のポイントについて、中毒のタイプ別に具体的に説明したいと思います。先ずは、命に係る致命的な猛毒きのこが含まれる循環器系の毒きのこについて取りまとめてみました。

・ドクツルタケ(写真)
 肝臓や腎臓の細胞を破壊することから、多臓器不全で死に至る確率の高い猛毒を持った猛毒御三家きのこのひとつです。テングタケ属に限っては、食べられるきのこからひとつずつ確実に覚えるようにすることが肝要で、疑わしいきのこは決して食べないことが基本です。
(見分け方のポイント)
1.きのこ全体が白色である(傘に条線なし)。
2.白色のツバとツボがある。
3.柄がササクレ状となる。
(類似の食用きのこ)
 シロマツタケモドキ(ツボがない)、ハラタケ(ヒダが着色でツボがない)、更には木材腐朽菌のヌメリツバタケ(樹上生)などの食用きのこに似ていますので、注意が必要です。

識別のポイント

 

ドクツルタケ

シロタマゴテングタケ

シロマツタケモドキ

ハラタケ

ヌメリツバタケ

傘の色

白色

白色

白色

白色

白色

傘の条線

なし

なし

なし

なし

ゆるい溝線

ツバ

白色

白色

白色

白色

白色

ツボ

白色

白色

なし

なし

なし

柄の色

白色

白色

黄白色

白色

白色

柄のリン片

ササクレ状

なし

ダンダラ状

なし

なし

・シロタマゴテングタケ(写真)
 ドクツルタケ同様、猛毒御三家のきのこです。形態的にも白くて美しい姿で、ドクツルタケに極めて類似しています。全体が白く、大きなツバとツボのあるきのこには特に注意が必要です。きのこの色やツバとツボの形は、ドクツルタケとよく似ていますが、全体的に小型で、柄にササクレがないことなどで区別が可能です。
(見分け方のポイント)
①きのこ全体が白色である(傘に条線なし)。
②白色のツバとツボがある。
③柄にはササクレがない(ドクツルタケとの識別ポイント)。
(類似の食用きのこ)
 ドクツルタケと同様の食用きのこ(シロマツタケモドキ、ハラタケ、ヌメリツバタケなど)が対象となりますので、白いきのこを採取する場合には、特段の注意が必要です。

・タマゴテングタケ(写真)
 やはり猛毒御三家のきのこですが、ドクツルタケなどと異なり、日本では比較的発生が珍しいきのこです。ドクツルタケの傘表面の色を黄色くしたようなきのこです。
(見分け方のポイント)
①きのこの傘がオリーブ色である(傘に条線なし)。
②傘と同色のツバとツボがある。
③柄がササクレ状となる。
(類似の食用きのこ)
 キシメジ(柄を含めた全体が黄色で、ツバとツボはない)など類似した優秀な食用きのこに似ていますので、注意の喚起が必要です。

・コレラタケ(写真)
 テングタケ属以外の致死性きのこで、テングタケ同様アマトキシン類の毒成分を保有します。別名ドクアジロガサとも言われますが、コレラ様の脱水症状を引き起こして死に至ることから、警戒心を喚起するための名称となっているのです。
(見分け方のポイント)
①傘の中央部が盛り上がり、乾くと中央部が退色する(傘に条線あり)。
②柄とヒダは傘と同色(茶褐色)で、柄がササクレ状、基部に白い菌糸束がある。
③柄のツバより上部が茶褐色に着色する。
(類似の食用きのこ)
 ナラタケ(ツバより上部が白色)、ナラタケモドキ(ツバなし)、エノキタケ(ツバはなく、ヒダが白色)、センボンイチメガサ(ツバの付き方は上向きで、ツバより上部が黄白色)など非常に形のよく似ているきのこが数多くありますので、特徴をしっかりと覚えて違って採取しないように注意が必要です。致命的な猛毒きのこであるため、迷ったら絶対に食べないことが基本です。

 

識別のポイント

 

コレラタケ

ナラタケ

ナラタケモドキ

エノキタケ

センボンイチメガサ

傘の色

茶褐色で中央部凸、乾燥で退色

茶褐色

茶褐色

茶褐色

茶褐色
乾燥で退色

傘の条線

あり

あり

あり

短い条線

弱い条線

ヒダの色

茶褐色

白色

白色

白色

白色

柄の色

ツバ上部茶褐色、下部茶褐色

茶褐色
ツバ上部褐色の条線

茶褐色
上部褐色

上部黄白色
下部黒褐色

ツバ上部白色
下部茶褐色

柄のリン片

ササクレ状

なし

なし

なし

逆毛ササクレ状

ツバ

あり

あり

なし

なし

上向き

柄の基部

白い菌糸束

暗褐色で綿毛状

菌糸なし

黒褐色ビロード状

なし

・カエンタケ(写真)
 ナラ枯れの増加とともに全国的に急速に発生が認められるようになっている、最近話題の猛毒きのこです。誤食による死亡例が報告されており、皮膚刺激性も強いことから、毒きのこでは唯一触っただけでも指のしびれや皮膚のただれ症状などを引き起こすため、取り扱いには特段の注意が必要です。発生が急増している原因は、カシノナガキクイムシがナラ枯れの原因菌である「ナラ菌」を感染させることによるのですが、同時にカエンタケの菌糸を伝播している可能性が考えられます。身近な公園などに発生し、きのこと思わずに触ってしまう危険性があることから、一般市民への注意の喚起が特に必要なきのこです。
(見分け方のポイント)
①傘はなく、棒状の形をしている(子のう菌)。
②全体が光沢のある赤褐色である。
③肉質は、硬く締まっている。
(類似の食用きのこ)
 きのこ全体が赤い色の似たような形のきのことして、ベニナギナタタケ(細くて柔らかい)があります。ベニナギナタタケは、カエンタケのように肉質が堅くてしっかりとしていませんので、容易に区別することができます。