株式会社キノックス

きのこの雑学・はたけしめじの雑学

分類学的位置について

「はたけしめじ」はキシメジ科シメジ属のきのこで、傘の大きさは4~9cm、色は暗灰褐色~茶褐色で、通常白いカスリ状の模様を有し、秋に道端や畑など土中内の腐朽の進んだ木材などを分解して発生する木材腐朽性のきのこです。古来より美味しいきのこの代表とされている菌根菌のホンシメジに分類学的には最も近いきのこであることが分かっています。  

  「はたけしめじ」はホンシメジに分類学的にもっとも近い木材腐朽性のきのこであることが判明してから、人工栽培化に向けた研究が各県の公設試験研究機関などで急速に進んだのですが、近年ではホンシメジも人工栽培可能となったことで、その違いが話題を集めるようになっています。2006年9月に秋田県立大学で開催された日本きのこ学会第10回大会で、菌蕈研と鳥取大学の共同研究により、ホンシメジには「はたけしめじ」と異なる「隠ぺい種」の存在することが明らかになったのです。具体的には、鳥取と兵庫の両県から採取されたホンシメジと岩手県で採取されたホンシメジとの交配試験を実施した結果、これら2個所の株と岩手県で採取された株とは交配しないことやrDNA‐ITS領域の塩基配列の解析結果においても明らかに異なるグループ(クラスター)に属することが解明され、ホンシメジには生物学的に異なる2種類の菌株(隠ぺい種)が混在していることが判明したのです。すなわち、これまでの野生のホンシメジには人工栽培可能な「はたけしめじ型」の隠ぺい種が含まれていたのです。両者を区別することなくこれまではホンシメジとして扱ってきた経緯から、人工栽培可能なホンシメジは偽装表示には当たらないと思われますが、今後名称の検討が必要になるのではないかと考えられます。いずれにしろ、「はたけしめじ」に近縁なホンシメジの存在が明らかとなったことで、「はたけしめじ」と並んで新たなきのこの人工栽培化に向けた研究が更にエスカレートして行くのではないかと考えます。今回の発表を機に、「はたけしめじ」はホンシメジに非常に近縁なきのこであることが、改めて理解できたと言えるのではないでしょうか。

 
UPGMA法で作成した系統樹
引用文献
    日本きのこ学会誌:Vol.16(3)105-108.2008