株式会社キノックス

きのこの雑学・なめこの雑学

ヌメリの成分について

「なめこ」は日本特産のきのこで、食習慣は北海道、東北などの採取可能な地域に限定されていましたが、最近は人工栽培の技術が進歩し、一年中どこでも入手できるようになったことで、全国的に消費されるようになりました。他の栽培きのこ類に比べ、旨味や香りの成分は少ないのですが、独特の「粘液(ヌメリ)」を持っていることから、トロリとした「舌触り」と「のど越し」の良さを味わうきのこです。タンパク質と食物繊維を豊富に含む食品で、特に「ヌメリ」と呼ばれる粘液多糖体は、他の栽培きのこ類では見られない高い栄養機能を有しています。ヌメリの成分はこれまで「ムチン」と呼ばれていましたが、動植物の粘性物質を「ムチン」と呼ぶ学説的根拠はないとの指摘があります。そのため、これまでの「mucin=ムチン」という訳語は使わずに、きのこの場合は「粘液多糖体」と言う表現で統一したいと思います。きのこは分類学的に植物には属さず、動物に近い地球上の「第3生物(菌類)」であることから、きのこのネバネバ物質は動物に近い粘質物だと思われます。これまでの研究成果によれば、ガラクツロン酸を主成分として脱水縮合した糖タンパク質(水溶性食物繊維)とヘミセルロース(不溶性食物繊維)、更には短い菌糸体が混在した特殊な「粘液多糖体」であることが判明しています。具体的な生理機能については、他のきのこ類同様、抗腫瘍活性を有するβ‐グルカンと呼ばれる不溶性食物繊維が多く含まれ、他にカリウムやリンなどのミネラルも比較的多く、低カロリーで、栄養価は高くないことから、ダイエットや肝臓の保護作用、更には血流改善作用などの効果のあることが報告されています。このように「なめこ」のヌメリの中には、水溶性と不溶性の両方の食物繊維と非常に細かい菌糸体が直接含まれていることで、他のきのこでは見られない特有の機能性を発揮しているものと思われます。

  「なめこ」の粘液を取り除いた試験では、機能性効果が認められなくなることが確認されていますので、機能性のポイントは、粘液体(ヌメリ)にあると言えそうです。そのため、ヌメリを逃がさない料理を心掛けることが何よりも大切だと言えます。「なめこ」の機能性を高める食べ方としては、粘液を汁ごと食べられる「汁物」や「和え物」が最も適しています。機能性を考えた場合には、茹で過ぎに注意し、しかも茹でた後の水洗いも最小限にしてください。ヌメリを取り除き過ぎると「なめこ」の持ち味が失われ、栄養価も低下してしまいますので注意しましょう。また、市販なめこをいっそう美味しく食べるコツは、袋から直接鍋に入れるのではなく、ザルに移してよく水洗いをし(酸味を洗い流す)、水温の状態からゆっくり温度を上げるように調理することです。沸騰した鍋に購入なめこを直接袋から投入することは、旨味が半減してしまいますので避けるようにしてください。特有のヌメリをもっと楽しみたい場合には、水洗いした「なめこ」を容器に移し、ヒタヒタ状態に水を加えて一晩冷蔵庫で寝かせてから調理します。一晩冷蔵庫で保管することで、驚くほどヌメリが多くなります。なお、市販の「なめこ」の酸味は、乳酸菌が原因です。本来の「なめこ」は決して酸っぱくないのですが、出荷時に水洗いすることで乳酸菌が発酵し易くなってしまいます。乳酸菌は悪玉菌ではありませんので、それ自身は悪さをしませんが、酸味のために味が落ちてしまいます。柄の切り口の変色(褐変化)を目安に、出来るだけ新鮮な「なめこ」をご賞味ください。